樹を育てること
葡萄園の持ち主が不在時がちにて、葡萄の樹を管理できないので、その葡萄園を丹波ほっこり農園が改殖して新たに開設することになりました。
草ぼうぼうの葡萄園が、約2日できれいな葡萄園に生まれ変わり、後は新たな葡萄の苗木を植付けるだけになりました。
この冬に植付けた葡萄の樹が本格的に葡萄の房を付けるのは5年後ぐらいになりそうです。
そんな先には生きていられるかどうか分からないのですが、新たな品種の葡萄ができるのが楽しみです。
ところで、先週の土曜日に京都市内で毎年開催されている京都府農林水産フェスティバルを向学のため、覗いてきました。
府内の農業・林業・水産業とそれぞれの加工業の方が一堂に会して自慢の産品を展示販売する集いです。
会場に入ると、お客さんの多さと産品出荷者の掛け声で熱気に包まれています。
特に水産、農業の各ブースは誘客の掛け声が大きく人だかりになっています。
しかし、何となく静かな一角があります。
林業関係の加工業、木製品の椅子とか文房具などを造り販売しているブースです。
農林水産業といえど、それぞれの業に専念されている人の生き方には随分、違いがあると
以前から感じていましたが、今回も改めて感じました。
農業は毎年、毎年の作物の植付け、育成、収穫の繰り返し。
水産業、漁業は捕れるかどうかは天、海任せの博打的要素の仕事。
そして、林業は植林して、枝打、下草刈りを数年すれば、樹が成長するのを待つのみ。
そんな仕事の性質から販売スタイルにも形が現れます。
林業コーナーのブースは誘客の働きかけもなければ掛け声もない。
愛想を振りまくでもなく、ただただ目の確かなお客さんを待つだけです。
何十年、三世代も先を見越して植林する林業の世界とその木材を材料にモノを造る木工の仕事。
いまでは儲かる仕事ではなくなりましたが、目先の利益を考えず、いい材を使いいいシゴトをし、永くお客さんに愛される品物を提供するスタイルは昔から綿々と継承されています。
愛想を振り撒き、普通のモノをより良いモノに見せかけるディスプレイやラッピングなどの流行るなかで、変わらぬスタイルで構えるブースに何気なしに清清しさを感じました。
今、世間では、静かな名木探検ブームが興っています。
最近では日本一高い62.3㍍の京都・「花背の三本杉」が話題になったりしていますが、「樹」を育てるという壮大な時間軸を再認識した今日この頃です。
小春日和 木の温もりの ベンチかな(呆悦)
過ぎたるは猶及ばざるが如し
この料理にはこの食材が合うとか、この薬味を加えれば美味しくいただけるとか料理のレシピには書かれています。
それぞれの食材には特徴があり、昔から言われてきた効用が、最近では科学的な分析で含有される栄養素が示されるようになりました。
現在、生姜を出荷しておりますが、生姜はジンゲロール、ショウガオール、ジンゲロンなどの要素が含まれており、体を温めるなどの効果があります。
生姜の出荷は収穫後、ついている土を水で洗い流します。この季節は寒さに耐えながらの水仕事になりますが、ショウガを料理に少し入れると汗が出るくらい体が温まり、季節外れの寒さも凌ぐことができます。
一方、銀杏にはカロテン、ビタミンC、デンプンなどに加え、カリウム、マグネシウムなどのミネラルを多く含み、栄養豊富な食べ物です。
先日、食べ過ぎは良くないとのことはわかっていながら、封筒に入れレンジでチンしてついつい20粒程度も食べてしまいました。
すると、夜中にここ10年ぐらい忘れかけていた感覚の堅さの異物を褥の中に感じてしまい、目が覚めました。
それぞれの食材にはそれぞれの効用があり、過度の食べ過ぎは、後で苦労します。
しかし、生姜も銀杏もこの季節の食材としては、最高の恵です。
銀杏の エメラルド色に 弾けたり(呆悦)
残雪の如し
10月末の台風21号の強風で葡萄園のテントが見事に破れてしまいました。
黒豆の枝豆販売を10月17日から11月7日まで行っていましたので、葡萄のテントのことは気掛かりになっていました。
昨日、片付けの作業に入り、改めて風の猛威には愕然とします。
しかし、お蔭様で葡萄の樹は無事であり、ホッとしています。
葡萄園の廻りの杉林はなんと集団で何本も倒壊しています。
杉は根が浅いため、強風に耐えられなかったのでしょう。
葡萄は蔓性の植物なので強風をしなやかな身のこなしで凌いだのでしょう。
どんなアゲンストな力にもスマートに対応できるしなやかさが人間にも必要と思う一日でした。
もみじ葉の 一雨ごとに 衣替え(呆悦)
ロケットストーブで暖を
11月の声を聞くと年賀はがきやおせち料理の予約注文のチラシ、年末調整のお知らせなど何かと忙しない。
現在では11月を「師走」と呼びたいところです。
丹波黒豆の枝豆販売も約半月が過ぎ、来週の11日頃に終わる予定です。
ところが、丹波黒豆を枝豆として食するのには、今が最高。
さやが丸々と太り、枝豆の色が微かに黒みかかってきた(決して「黒くはない」)時です。
枝豆直販所は山蔭にあるため、朝夕は冷え込み、ここでもストーブが要ります。
ここで活躍するのが「ロケットストーブ」。昨年にハウスの雪解け用に造った簡単なストーブですが結構、暖かい。
道端に落ちている小枝を燃料にするエコロジカル、エコノミーな暖房器具です。
家では薪ストーブ、直販所ではロケットストーブと毎日、火を燃やしていますが飽きない。
火を燃やすのが好きな人は昔から「スケベエ」と言われていますが、私も確かにキライな方ではありません。
「火遊び」とか「Off White」とか何んとか言って週刊誌やテレビを賑やかしていますが、過疎化の農村で逢うのは、おばちゃんと鹿、猪のみで、「火遊び」なんて別社会の話。
火を扱うのは正に暖を取るための「火仕事」なのです。
今が旬の「Off White」の黒豆枝豆の販売に専念、専念の毎日です。
(「Off White」はたぶん年末に今年の流行語大賞の一つになるでしょう。)
薪ストーブの季節
農村の初秋は冷え込みます。
11月迄は暖房なしで暮らそうと思っていましたが、台風が過ぎ去り、あまりの冷え込みで今晩から薪ストーブに火を入れました。
やはり薪ストーブは暖かい。
農村での唯一の贅沢です。
室内は裸でも過ごせるし、洗濯物は室内でも翌朝にはカラカラに乾き、煮炊きものものでき、栗やサツマイモは振り込んでおけば上手く焼けます。
さらに、窓ガラスには結露ができません。
そういえど、良いことばかりではありません。
薪は1シーズン軽トラ2台分は要ります。
玉伐り、薪割りの労働や薪小屋から毎日、取り入れ、灰の始末も必要。
また、一時間ごとに薪をくべなければなりません。
薪を買うとなれば、枝豆の一束位の大きさで500円ぐらいはかかるでしょう。
そんなことを考えると農山村でないと薪ストーブは使えないでしょう。
農村の夜は静かに更けていきます。
そんな深い夜にストーブの中で薪がめらめらと燃え行く風景を見ていると時の経つのも忘れます。
薪ストーブは自然エネルギーの活用の一つですが、太陽光発電、小型水力発電、風力発電、溜め込みトイレのメタンガス利用など
自然との共生の生活の営みに一つ一つ挑戦してみたいと夢見る初老の農夫です。
初ストーブ 時計の針は はや30度(呆悦)